皆さん、こんにちは。就労継続支援B型事業所ONEGAME八千代台のサービス管理責任者、かまちゃんです。今日は私がこの業界で30年に渡って携わってきた中で、特に熱い思いを持っている「イラスト作業」について、その可能性と魅力をお伝えしたいと思います。

30年の実践から見えてきたもの
30年前、私が初めて福祉の世界に足を踏み入れたとき、障がい者の就労支援はまだ今ほど多様ではありませんでした。単調な内職作業が中心で、個性や才能を活かす視点はあまりありませんでした。 そんなある日、利用者さんの一人が休憩時間にノートにキャラクターを描いているのを見かけました、恥ずかしそうに隠そうとする彼に、「見せてくれないか」と声をかけると、素朴だけれど温かみのある、心に響くキャラクターが描かれていました。 「こんな素敵な絵、もっと多くの人に見てもらえたらいいのに」 その小さな出来事が、長い試行錯誤の末に結実した私たちの事業所での「イラスト工賃作業」の原点だったのです。
なぜイラストが「ちょうどいい」のか
30年の経験を通じて、様々な工賃作業を模索してきましたが、イラスト作業には他にはない特別な価値があると確信しています。それは単なる思い込みではなく、実際に何百人もの利用者さんの成長を見てきた経験からくるものなんですね、
①個性がそのまま価値になる 障がいのある方々の表現には、既存の枠にとらわれない自由さと純粋さがあります。一般的な「上手・下手」という基準ではなく、その人にしか生み出せない世界観や表現が、今の社会では強く求められています。 昨年、自閉症スペクトラムのTさんが描いた幾何学的なパターンのイラストがある企業のロゴに採用された時は、本人も私たちスタッフも涙が出るほど嬉しかったです。彼の「こだわり」と呼ばれていたものが、立派な「特技」として認められた瞬間でした。30年の私の支援経験の中でも、最も感動した場面の一つです。
②自分のペースで取り組める 精神障がいや発達障がいのある方々にとって、決められた時間内に一定量をこなす作業は大きなストレスになることがあります。これは30年前も今も変わらない事実です。イラスト作業は基本的に自分のペースで進められるため、その日の体調や気分に合わせた取り組みが可能です。 「今日は集中力が続かない」という日もあれば、「気づいたら何時間も描き続けていた」ということもあります。そんな波があることを受け入れながら、長く続けられる作業であることがとても重要なのです。私が30年間で見てきた多くの工賃作業の中で、最も長続きしやすいのがイラスト関連の作業です。
③目に見える成長を実感できる 何よりも私が嬉しいのは、イラスト作業を通じて利用者さんが自分の成長を実感できることなんです、最初は小さなメモ用紙に描いていた絵が、やがて大きなキャンバスに描かれるようになり、そして商品になる―
「私にもできることがある」
「私の作品が誰かの役に立っている」
このような実感は、工賃以上の価値があります。自信につながり、次のステップへの原動力になるのです。30年間、様々な利用者さんを見てきましたが、この「自己肯定感の向上」こそが社会参加への最大の鍵だと確信しています。
イラスト作業の実際と工夫
とはいえ、ただ「絵を描いてください」では工賃作業として成立しません。私たちが30年の試行錯誤を経て実際に行っている取り組みをいくつかご紹介します。
多様な形での商品化
・グリーティングカード
・トートバッグやTシャツなどのプリント商品
・LINEスタンプ、デジタル素材
・企業とのコラボレーション商品
・地域イベントでのポスター作成
イラストはそのまま額に入れて飾るだけでなく、様々な形で商品化できることが強みです。それぞれの利用者さんの特性や得意なタッチに合わせて、最適な商品形態を一緒に考えていきます。30年前に比べると、少量多品種の商品を作りやすくなった現代の環境は、障がい者のイラスト作業にとって大きな追い風です。

デジタルとアナログの使い分け
従来の紙と鉛筆でのイラスト制作に加え、最近ではタブレットを使ったデジタルイラストも取り入れています。手先の細かい動きが難しい方でも、適切な補助具やアプリを使うことで素晴らしい作品を生み出せるようになりました。アナログでラフを描き、デジタルで色付けするなど、それぞれの良さを組み合わせることで、より多くの方が参加できるようになっています。30年前には想像もできなかったテクノロジーの進化が、多くの可能性を生み出しています。
チームでの制作体制
一人の利用者さんが全工程を担当するだけでなく、「下絵担当」「色塗り担当」「デザイン担当」など、得意な部分を活かせるチーム制作も行っています。これにより、「絵は苦手だけど色のセンスには自信がある」という方も活躍できる場が生まれました。30年の経験から言えるのは、「誰もが何かしらの得意なことを持っている」ということ。それを見つけ出し、活かせる環境を作ることが支援者としての最大の役割だと感じています。
実際の効果と変化
①工賃向上
数字だけを見れば、イラスト作業の導入前と比べて、私たちの事業所の平均工賃は約1.5倍になりました。特に大きいのは、季節商品やイベント連動商品による収入増です。クリスマスカードや年賀状など、季節限定商品は毎年予約が増えています。 30年という時間をかけて築いた地域との信頼関係も大きいと思います。最初は「福祉施設の作品」という慈善的な購入でも、次第に「あの事業所のイラストだから欲しい」という商品価値での購入に変わってきています。
②利用者さんの変化
コミュニケーションの増加 作品について話し合うことが自然な会話のきっかけになりました ・自己評価の向上 「自分には価値がない」と思っていた方が、作品を通じて自分の存在意義を感じられるようになりました ・長期的な目標設定 「いつか個展を開きたい」「イラストレーターとして独立したい」など、将来への希望を持つ方が増えました 30年間で最も大きな変化は、利用者さん自身が「福祉サービスの利用者」から「クリエイター」へと自己認識を変えていくプロセスを何度も目の当たりにしてきたことです。これは工賃以上の価値があると感じています。
社会との接点の広がり
イラスト作業の最大の魅力は、社会とのつながりを自然に作れることです。 商品を買っていただくお客様からの「素敵ですね」という言葉、SNSでの反応、企業からのオファー…。これらは全て、障がいのある方々の表現が社会に受け入れられ、必要とされている証拠です。 地域のイベントでは、利用者さんが自分の作品の前で説明する場面も増えました。最初は緊張していた方も、「私の絵について聞いてくれるなんて嬉しい」と、徐々に自信を持って人と接することができるようになっています。 30年前と比べると、社会の障がい者に対する見方も大きく変わりました。「できないこと」ではなく「その人ならではの表現」に価値を見出す風潮が広がっていることは、とても心強く感じます。
進化し続けるために
もちろん課題もあります。安定した受注の確保、適切な価格設定、著作権の管理など、解決すべき問題は多くあります。しかし、それらは「できない理由」ではなく、「より良くするための課題」として捉えています。30年間、常に「できる理由」を探し続けてきたことが、今の形につながっていると思います。
最新の動きと可能性
現在、私たちが特に力を入れているのは、地域企業とのコラボレーションです。地元の飲食店のメニュー表紙や、お土産物のパッケージデザインなど、身近なところで利用者さんの作品が活用される機会が増えています。 また、NFTやデジタルコンテンツ市場も新たな可能性を秘めています。作品のデジタル販売により、物理的な制約なく多くの方に届けられるようになりました。30年の経験があるからこそ、新しい技術や市場の変化にも柔軟に対応していきたいと思っています。
イラストは「表現」であり「つながり」
最後に、私が30年間ずっと感じ続けていることをお伝えしたいと思います。 イラストは単なる「絵」ではありません。それは自分の内側にあるものを外に表現する手段であり、他者とつながるためのコミュニケーションツールです。 言葉でうまく伝えられなくても、感情や思いをイラストに込めることができる。それを見た誰かが「わかる」と感じる。その瞬間、障がいの有無を超えた人と人のつながりが生まれます。私が30年間、福祉の現場に立ち続けてきた原動力は、そのような瞬間に立ち会えることの喜びです。イラストという形を通じて、「できない」と思われていた方が輝く姿を見ることができる。それは何物にも代えがたい経験です。 私たちONEGAME八千代台では、このような「表現」と「つながり」の場を大切にしながら、これからも利用者さん一人ひとりに合った工賃作業を模索していきます。30年の経験を活かしながらも、常に新しいチャレンジを続けていきたいと思います。

お気軽にご相談ください
「うちの事業所でもイラスト作業を取り入れたい」 「利用者さんの作品を活用できないか検討したい」 そんな思いをお持ちの事業所や企業の方々、ぜひご連絡ください。私の30年の経験や失敗談も含めて、できる限りの情報共有をさせていただきます。 また、ご家族の方々にも知っていただきたいのは、「絵が上手くなくても大丈夫」ということ。大切なのは「上手・下手」ではなく、表現することの喜びと、それが誰かに届く体験です。 イラストが、障がいのある方々の社会参加への第一歩となる。そんな未来を一緒に作っていきましょう。
ONEGAME八千代台 サービス管理責任者 かまちゃん
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