「絵が上手くないと、キャラクターデザインなんて無理ですよね」
そう感じて、このページを開いた方もいるかもしれません。
働くことがうまくいかなかった経験があると、「自分には特別な才能もない」と思い込んでしまうことがあります。けれど、キャラクターデザインは“センスの勝負”ではありません。大切なのは、自分の個性や感じ方をどう整理し、どう形にしていくかという“考え方”です。
実は、キャラクターデザイン初心者でも、正しい視点を知れば表現は変わります。そしてそのプロセスは、イラストを仕事にしたい人や、就労継続支援B型でクリエイティブな力を伸ばしたいと考えている人にとって、大きなヒントになります。
この記事では、「才能がある人の話」ではなく、「あなたの個性をどう活かすか」という視点から、キャラクターデザインの本質を丁寧に解説していきます。
読み終えたとき、自分の可能性の見え方が少し変わっているはずです。
キャラクターデザインは「センス」ではなく「考え方」で決まる
「自分にはセンスがないから無理だと思うんです」
キャラクターデザインに興味を持ちながらも、そうやって一歩引いてしまう人は少なくありません。でも実際に現場で求められているのは、“ひらめき”よりも“整理する力”です。ここを誤解したままだと、本来伸びるはずの人が自分の可能性を閉じてしまいます。まずはその思い込みを、静かにほどいていきましょう。
センスよりも「設計図」がすべてを決める
キャラクターデザインは感覚ではなく、設計の積み重ねでできています。
なぜなら、見る人に伝わるキャラクターには必ず「意図」があるからです。ただ可愛い、ただかっこいいというだけでは、印象は長く残りません。例えば、ゲームやアニメで人気のあるキャラクターを思い浮かべてみてください。服装や髪型、表情、色使いの一つひとつが、そのキャラクターの性格や役割と結びついています。元気な性格なら動きやすい服装、冷静なタイプなら落ち着いた色味、といった具合に、すべてが理由あってそこにあります。
次に大切なのは、「なぜこのキャラは存在するのか」という問いです。物語の中でどんな立ち位置なのか、どんな課題を抱えているのか。それが曖昧なまま描き始めると、ビジュアルは整っていても中身が空洞になります。逆に、設定が明確であれば、多少絵が拙くてもキャラクターは生き生きと動き始めます。実際、プロの制作現場ではラフ画より先にテキストで細かな設定が作られることも珍しくありません。
そして三つ目は、「他者の目線」です。キャラクターデザインは自己表現であると同時に、相手に届ける仕事でもあります。自分が好きなものを詰め込むだけではなく、「見る人にどう伝わるか」を想像できるかどうかが大きな分かれ道になります。この視点を持てるようになると、デザインは一気に“作品”から“仕事”へと変わっていきます。
つまり、求められているのは特別な才能ではなく、順番に考える力なのです。
「うまく描く」より先にやるべきことがある
多くの人が最初に悩むのは、「画力が足りない」ということです。でも実は、上達の順番を少し変えるだけで見え方は変わります。
まず意識したいのは、「何を描くか」よりも「なぜそのデザインなのか」を言葉にすることです。たとえば、静かな性格のキャラクターを描くと決めたなら、なぜ静かなのか、何がきっかけでそうなったのかまで掘り下げてみる。そこまで考えると、自然と姿勢や目線、服装の選び方まで方向性が定まってきます。絵の前に思考がある、という順番です。
次に大切なのは、自分の得意・不得意を知ることです。細かい装飾が苦手でも、シンプルな線で雰囲気を出すのが得意な人もいます。派手な色使いは難しくても、落ち着いた配色で世界観をまとめるのが上手な人もいる。ここを無理に矯正しようとするのではなく、「どう活かすか」に目を向けると、デザインはぐっと自然になります。
そして最後に伝えたいのは、デザインは“積み上げ型”だということです。一度で理想のキャラクターが生まれることは、まずありません。設定を考え、描いてみて、違和感を修正していく。その繰り返しの中で、考える力が磨かれていきます。このプロセスこそが、本当の意味でのスキルです。
キャラクターデザインは、選ばれた人だけの世界ではありません。順番を理解し、丁寧に積み重ねていけば、誰でも少しずつ形にできるものです。
個性は“直すもの”ではなく“設計するもの”
「自分の性格は、社会ではマイナスだと思う」
そう感じたことがある人ほど、このテーマは大切です。落ち込みやすい、こだわりが強い、人と話すのが苦手。一般的な職場では“弱点”と見なされがちな特性も、キャラクターデザインの世界ではまったく違う意味を持ちます。問題は“あるかどうか”ではなく、“どう扱うか”です。
短所に見える特性こそ、表現の核になる
個性は消すものではなく、活かし方を決めるものです。
たとえば、細かい部分が気になってしまう人は、日常生活では疲れやすいかもしれません。でもその観察力は、衣装の質感や小物の描き込みに驚くほどの説得力を与えます。実際に、人気のあるキャラクターほど、靴の傷やボタンの素材感まで丁寧に設計されています。そこに気づける目は、立派な武器です。
また、感情の波が大きい人は、生きづらさを感じやすい反面、感情表現の幅が広いとも言えます。喜びや怒り、孤独や安心といった繊細な揺れを、自分の体験として知っているからこそ、キャラクターの表情に深みが出る。表面的な笑顔ではなく、「本当に笑っている顔」が描けるのは、感情を知っている人です。
さらに、ひとつのことに強く集中できる特性も、創作では大きな力になります。背景や装飾、世界観設定を何時間も掘り下げられる人は、物語に厚みを与えます。一般的な働き方では扱いづらい特性も、方向を定めれば価値へと変わるのです。
「普通に合わせる」よりも「強みに合わせる」発想
個性を活かすためには、無理に平均に近づこうとしないことが重要です。
多くの人がまずやってしまうのは、「周りに合わせる努力」です。話し方を矯正しようとしたり、苦手な作業を克服しようとしたり。それ自体は悪いことではありませんが、それだけでは疲弊してしまいます。創作の世界では、むしろ「自分らしさ」が軸になります。
キャラクターデザインでも同じです。流行の絵柄を追いかけるよりも、自分が自然に描ける線や色を知るほうが、結果的に強い個性になります。線が硬いなら、それを活かしたシャープなキャラクターを設計すればいい。柔らかい線しか引けないなら、優しい世界観を磨けばいい。無理に“正解”に寄せなくてもいいのです。
そして何より、自分の特性を言語化できるようになると、表現は一段階深くなります。「自分はこういう傾向がある」と理解している人は、キャラクターにも一貫性を持たせられます。設定がぶれないキャラクターは、見る人に安心感を与えます。それは仕事としても大切な視点です。
個性は修正対象ではありません。どう設計するかを考えた瞬間から、それは価値に変わります。
キャラクターづくりの基本ステップ
ここまで読んで、「考え方が大事なのはわかった。でも実際、何から始めればいいの?」と感じているかもしれません。大丈夫です。キャラクターデザインには、感覚に頼らないための順番があります。難しい理論ではなく、地に足のついたステップです。この順番を知るだけで、描き出しの迷いは驚くほど減ります。
まずは「このキャラは誰なのか」を決める
キャラクターデザインは、見た目より先に“存在理由”を決めるところから始まります。
いきなり髪型や服装を考えるのではなく、「このキャラクターはどんな立場の人なのか」をはっきりさせます。学生なのか、戦う人なのか、サポート役なのか。それによって、必要な要素は自然と変わります。例えば、前線で戦う設定なら動きやすさが必要ですし、頭脳派なら落ち着いた雰囲気が求められます。立場が曖昧なままだと、デザインもどこかちぐはぐになります。
次に、そのキャラクターの“価値観”を考えます。何を大切にしているのか、何が嫌いなのか。ここが決まると、表情や姿勢に説得力が出ます。自信家なら視線はまっすぐになるでしょうし、警戒心が強いなら少し肩がすくむかもしれません。内面が決まると、外見はあとからついてきます。
そして最後に、「このキャラを一言で表すと?」と自分に問いかけます。元気、孤高、繊細、頑固など、シンプルな言葉でいいのです。この軸があるだけで、デザイン中に迷ったときの戻る場所ができます。ブレないキャラクターは、この一言から生まれます。
内面から外見へ落とし込む
ビジュアルは飾りではなく、内面の翻訳です。
性格や役割が決まったら、それをどう見た目に反映させるかを考えます。たとえば、慎重な性格なら露出の少ない服装になるかもしれませんし、自由奔放な性格なら色使いも大胆になるでしょう。ここで大事なのは、「なんとなく」選ばないことです。すべてに理由を持たせる意識が、デザインの密度を上げます。
色の選び方も同じです。暖色は活発さや親しみやすさを感じさせ、寒色は落ち着きや冷静さを連想させます。もちろん絶対ではありませんが、色には心理的な印象があります。それを理解した上で選ぶだけで、見る人への伝わり方は変わります。プロの現場では、配色ひとつでキャラクターの立ち位置を表現することも珍しくありません。
さらに、シルエットも重要です。遠くから見たときに誰かわかる形になっているか。これは意外と見落とされがちですが、強いキャラクターほど輪郭に特徴があります。大きなマントや独特の髪型など、影だけでも識別できるデザインは、それだけで印象に残ります。
順番を守るだけで、キャラクターデザインは感覚任せの作業ではなくなります。考え、言葉にし、形にする。その繰り返しが、あなたの表現を確実に育てていきます。
「好き」を仕事に近づけるために必要な視点
キャラクターデザインが少しずつ形になってくると、「これを仕事にできたらいいな」と思う瞬間が出てきます。ただ、ここで一つだけ視点を変える必要があります。趣味として楽しむことと、仕事として成立させることは、似ているようでまったく違います。その違いを知ることが、遠回りしないための大切な一歩です。
自己満足から「伝わる表現」へ
仕事に近づけるために最初に意識したいのは、自分が満足するかどうかよりも、相手に伝わるかどうかです。
趣味であれば、自分が好きな世界観をどこまでも追いかけて構いません。でも仕事になると、「誰に、何を届けるのか」という視点が加わります。たとえば、ゲームのキャラクターであれば、プレイヤーが一瞬で役割を理解できることが求められます。ヒーラーなのか、アタッカーなのか、支援型なのか。見た瞬間に伝わるデザインには、無駄がありません。
また、依頼者の意図をくみ取る力も重要になります。「かっこよくしてください」という曖昧な言葉の裏にある期待を読み解くこと。年齢層、媒体、世界観。条件を整理し、そこから最適解を探す力は、感覚ではなく訓練で磨かれます。考える力がある人ほど、ここで伸びていきます。
さらに、修正を前向きに受け止められることも大切です。仕事では「描き直し」は当たり前にあります。それは否定ではなく、より良くするための対話です。自分の作品を客観視できるようになると、成長のスピードは一気に上がります。
再現できる力が「仕事」になる
もう一つ大切なのは、安定して描けることです。
一度だけうまく描けることと、何度でも一定のクオリティで描けることは別物です。仕事では後者が求められます。今日は描けるけれど、明日は描けない、では信用にはつながりません。だからこそ、感覚任せではなく、工程を言語化しておくことが重要になります。
たとえば、自分なりの制作手順を決める。設定を書く、ラフを描く、配色を決める、清書する。毎回この順番で進めるだけでも、仕上がりのブレは減ります。安定は、才能ではなく仕組みから生まれます。
そして、締切を守ることも仕事の一部です。どれだけ良いデザインでも、約束した時間に間に合わなければ成立しません。時間配分を考えながら制作する習慣は、クリエイティブ分野で働くうえで欠かせない基礎力です。
「好き」という気持ちは、出発点としてとても大切です。でもそこに、伝える力と再現性が加わったとき、はじめて“仕事に近い表現”になります。その視点を持てるかどうかで、未来の選択肢は大きく変わります。
個性を活かせる環境とは何か
ここまで読んで、「考え方はわかった。でも、自分ひとりで続けられるだろうか」と感じている人もいるかもしれません。実際、キャラクターデザインは孤独な作業になりがちです。だからこそ大切になるのが、“どんな環境で学ぶか”という視点です。才能よりも環境が人を伸ばすことは、クリエイティブの世界では珍しくありません。
「教えてもらえる場所」ではなく「鍛えられる場所」
本気で力を伸ばしたいなら、やさしいだけの環境では足りません。
もちろん安心できる空気は大切です。ただ、それだけでは成長はゆるやかになります。デザインの現場では、「なぜこの配色なのか」「この設定で本当に伝わるのか」と問いかけられることが当たり前です。理由を言葉にする習慣がある場所ほど、思考は磨かれていきます。
また、作品に対して具体的なフィードバックがあることも重要です。「いいですね」だけではなく、「ここは一貫性が弱い」「このシルエットならもっと特徴を出せる」といった指摘があるかどうか。厳しさではなく、成長のための視点があるかが分かれ道になります。
さらに、目指す先がはっきりしていることも欠かせません。ただ創作を楽しむのではなく、社会で通用するレベルを見据えているかどうか。一般就労を視野に入れた基準で学ぶ環境は、自然と取り組み方も変わります。意識が変われば、行動も変わります。
個性を尊重しながら「社会とつなぐ」視点
もう一つ大切なのは、個性を否定せずに、社会との接点をつくってくれるかどうかです。
特性や不安がある人にとって、「普通に合わせる」ことを求められる場所は負担になります。一方で、特性を理解したうえで役割を考えてくれる環境では、自分の力を発揮しやすくなります。創作に集中できる時間と、社会に向けて発信する機会。その両方がある場所は、成長のバランスが取れています。
また、eスポーツやイラストといった分野に本気で取り組める環境かどうかも見極めたいポイントです。設備が整っているだけでなく、実際にスキルとして積み上げられる仕組みがあるか。表現を学びながら、働く力も同時に育てていく視点があるかどうかは、大きな違いになります。
そして何より、「ここから先に進める」と思えるかどうか。通うことが目的になるのではなく、その先の未来が描ける場所かどうか。それが、良い就労継続支援B型を見極める一つの軸です。
個性は、環境によって伸び方が変わります。あなたの強みをただ受け止めるだけでなく、社会へつなげようとする場所に出会えたとき、キャラクターデザインは趣味を超えた力になります。
まとめ:あなたの個性は、設計次第で「力」になる

ここまで読んでくださったあなたは、きっとどこかで「自分にもできるかもしれない」と感じ始めているのではないでしょうか。もしそうなら、その感覚はとても大切です。キャラクターデザインの話をしてきましたが、本質はもっとシンプルです。個性は、扱い方次第で力になるということです。
才能よりも「順番」と「環境」が未来を変える
キャラクターデザインは、特別な人の世界ではありません。
センスがあるかどうかよりも、考える順番を知っているかどうか。内面から設計し、理由を持って形にし、伝わるかどうかを見直す。この積み重ねが、表現を確かなものにしていきます。うまく描けない日があっても、それは才能の問題ではなく、プロセスの途中にいるだけです。
そしてもう一つ大切なのは、どんな場所でその力を磨くかということです。ただ時間を過ごすのではなく、「社会で通用する力」を意識して学べる環境に身を置くこと。個性を否定せず、それをどう活かすかを一緒に考えてくれる場所であれば、成長の速度は確実に変わります。
働くことに不安がある人も、これまでうまくいかなかった経験がある人も、創作を通して自分を見つめ直すことはできます。キャラクターデザインは、その入口の一つです。絵を描くことは、自分を知ることでもあります。
もし今、「何かを変えたい」と思っているなら、一度環境を見に行ってみてください。話を聞くだけでも構いません。実際に空気を感じることで、自分の可能性の輪郭が少しはっきりします。
あなたの個性は、直すものではありません。
設計し、磨き、社会とつなぐことで、確かな力になります。



